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医療機器洗浄アドバイザーコラム 第32弾
2023年11月13日中四国エリア担当の川端です。
秋もだいぶ深まって来て朝夕の寒暖の差が激しく体調を崩しやすい季節ですので体調管理をしっかりして行きたいものです。
今回は『サビや熱やけ』などについてというテーマでお届けします。
ステンレスは鉄を主成分とした合金で、そこに10.5%以上のクロムを含んでいます。そのクロムがポイントで、クロムが酸化してできる不働態被膜がステンレス全体を覆い保護するためサビが発生しにくくなります。
そのへんの不働態被膜のことについては過去の当コラムで詳しく触れています。
https://www.ncc-medical.com/column/400
また手術器材で最も使われることの多い『ステンレス』についてはこちらで詳しく紹介しています。
https://www.ncc-medical.com/column/443
今回はこれらと関連するテーマでの深堀りをしていきます。
ステンレスに熱をかけた時の現象に『テンパーカラー』というのがあります。『レインボー現象』と言ったりもします。
テンパーカラーは一般的にはステンレスにバーナーなどの炎をあてたりして何千度という熱をかけた時に表面が変色する現象のことを言います。
これは、最初はシルバーのステンレスがゴールド、さらに進むとブルー、パープル、ブラックと段階的に進んできます。
『銀→金→青→紫→黒』
なぜこのような現象が起きるのでしょうか。
またこのような現象はステンレスにどのような影響を与えるのでしょうか。
ステンレスは高温になるとクロム(Cr)が炭化して炭化クロム(CrC)になります。
この炭化クロムの量が増えてくると不働態被膜を形成するためのクロムの量は相対的に減っていきます。これを鋭敏化といいます。
不働態被膜を形成するクロムが減ってくると、その次に酸化被膜を形成するのは鉄(Fe)です。この鉄の酸化被膜の割合が多くなるにつれて表面の色が変わっていくのが『テンパーカラー』『レインボー現象』といいわれるものの正体です。
これを『粒界腐食』といいステンレスの耐食性が下がっていることを示しています。要は不働態被膜があまり強固なものとはなっていないためサビやすい状態になっているので
病院で使われる器材の多くはステンレスです。
NCC Column LIST
いろんな病院で使われている器材を見てみると上記にあったような金色や青みがかったもの、紫色に変化しているものなどがあったりします。
WDなどの洗浄では何千度という高温にはなりませんが、アルカリ洗剤を使用しての高温洗浄をしているところでは『テンパーカラー』『レインボー現象』が起こっているのだと思います。
つまりこのように変色した器材はサビやすい器材になっていると言えると思います。
そこで弊社の器材メンテナンス剤をご紹介します。
①サーモシールドPは硝酸の強い酸化作用で強固な不働態被膜を再形成します。
サビが取れるのはもちろん、同じ箇所からは再びのサビが発生しにくくなりますし、変色や熱やけしたものを元のシルバーに戻すことも可能になります。
②サーモシールドCはクエン酸ベースの中和剤、メンテナンス剤でWDのすすぎ行程で使用します。ステンレスだけではなく器材適合性にすぐれ、安心してお使い頂けます。
③サーモシールドシャインはWDの最終すすぎ行程で使用します。器材適合にすぐれ、乾燥促進能力もある溶剤です。
これらの溶剤を使うことでステンレス器材の劣化対策が可能になります。
器材の能力を維持し、寿命を延ばすことでランニングコストの削減にもなるはずです。