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歯科医療器器材洗浄における感染対策とは
2022年11月14日平成26年5月に、歯科医療機関で歯を削る医療機器(エアータービンハンドピース、電気エンジンハンド
ピース)が滅菌せずに使い回されていると読売新聞記事で大きく報道されました。
これを受けて同年5月、日本歯科学会より下記の通知がホームページに記載されました。その後、同年6月
4日付けで厚生労働省から各都道府県・保険所等に当該指針を参考として院内感染対策の啓発に努める旨の通知が発せられました。
・日本歯科医学会 通知
指針に基づき、エアータービンハンドピース、電気エンジンハンド ピースは、患者毎に蒸気加圧式滅菌法(オートクレーブ)を用いて滅菌したものを使用して下さい。
・厚生労働省通知 抜粋
使用済み医療機器は、消毒・滅菌に先立ち洗浄を十分行う
生体の無菌領域へ使用する器材は滅菌が必要であり、粘膜に接触する器材は高水準消毒を行う
・標準予防策(スタンダード・プリコーション)
標準予防策は,感染症の有無に関わらずすべての患者のケアに際して普遍的に適用する。予防策である。
標準予防策は,患者の血液,体液(唾液,胸水,腹水,心嚢液,脳脊髄液等すべての体液)
,分泌物(汗は除く),排泄物,あるいは傷のある皮膚や,粘膜を感染の可能性のある物質とみなし対応することで,患者と医療従事者双方における病院感染の危険性を減少させる予防策である。では、標準予防策(スタンダード・プリコーション)が言う洗浄とは⁉
異物(汚物・有機物など)を対象から除去することをいいます。洗浄によって異物を除去しておかなければ、消毒や滅菌が無効になることがあります。
・歯科医療器材の洗浄の種類
① 手動による洗浄:流水下でブラッシングによる洗浄
② 洗剤を使用しての洗浄:洗浄の際、アルカリ洗剤や中性酵素洗剤などの洗剤を使用する
※ 著しく血液、体液に汚染がある器材は水洗い後に浸漬する
③ 自動洗浄装置(ウォッシャーディスインフェクターなど)による洗浄:高温洗浄によって、病原微生物による感染性は消失させることができる
※滅菌水準には達することができない
④ 超音波洗浄装置による洗浄(卓上超音波洗浄装置):超音波には殺菌作用自体はないが歯科医療器材表面に付着する微生物やバイオロジェン(発熱物質)などを除去する
・歯科医療器材の洗浄の注意点
① 汚染器材:乾燥を防止するために出来るかぎり速やかに処理
② 歯科医療器材に付着した血液や汚れが乾燥:血液凝固やたんぱく質が固定し洗浄が困難になる。また、汚染物による腐食や錆の発生にもつながる
③ 速やかに汚染を除去できない場合:水や浸漬洗剤へ浸漬
④ 用手洗浄を実施する場合:汚染器材専用の流し台を決め、作業者はマスク・防水ガウン・未滅菌手袋・フェイスシールドを着用
⑤ 薬剤消毒を行う場合:確実な洗浄後・すすぎを十分に実施し乾燥を行う
・歯科器材のスポルディングの法則から見る洗浄
・クリテカル:滅菌
NCC Column LIST
・定義:人体における無菌の組織や血管に接触するような、感染リスクが高い器具
・器具:インプラント・歯周外科器具・外科手術器具やキュレット・プローブ・ファイル類など
・セミクリテカル:高水準消毒・中水準消毒
・定義:粘膜面または健常ではない皮膚に接触するが、体内の無菌的部分には侵入しない器具
・器具:ミラーや印象用トレー・咬合紙ホルダーなど
・ノンクリテカル:低水準消毒・洗浄
・健常な皮膚と接触するが、粘膜や健常でない皮膚には接触しない器具
・器具:レントゲンコーンやチェアー・血圧計のカフなど
スポルディングの法則の表を見て頂ければわかるとは思いますが、全ての分類で一番初めに実施するのが洗浄で『洗浄なくて消毒・滅菌なし』と言われる部分で洗浄を疎かにするとその後の消毒・滅菌などが達成されません。前項での出ている洗浄のポイントに注意をしつつ確実洗浄を心がけ洗浄業務にあたりましょう。