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A₀値の値を消毒レベルで言うとどの分類?
2022年09月01日今月のコラムは、とある現場責任者の方からの質問を受けて『この内容を深堀解説して見よう』と思ったのがきっかけになっています。その内容と言うのが『A₀値の値を消毒レベルで言うとどの分類?』と言う物でした。ネットや文献を調べてみるとスポルディングの法則と消毒レベルは詳しく説明されている書物は直ぐに見つかりますが、確かにA₀値の分類と消毒レベル分類を相関性を持って説明している書物は多くは無いと言うのが実感です。これは、何となく「皆わかっているでしょ」「説明するまでもない」的な要素があるのではないかと思います。ただ、「知りたいけど恥ずかしくて聞けない」と思われている方も少数派でもくいらっしゃるのなら情報をその方が向けに発信できればと思い今回コラムを書き進めさせて頂きます。
まず、スポルディングの法則ってなんぞや?と言う部分から始めさせて頂きます。
スポルディングの法則とは1939年に、アメリカの学者「アール.H.スポルディング」が提唱した、医療器具の処理方法における分類方法で、感染リスクの程度に応じて医療器材を3つのカテゴリーに分類し、消毒についても3つの水準に分類されています。
医療器材カテゴリーは
・ クリティカル : 人体における無菌の組織や血管に接触するような、感染リスクが高い器具の
再処理
・ セミクリティカル : 粘膜面または健常ではない皮膚に接触するが、体内の無菌的部分には侵入し
ない器具の再生処理
・ ノンクリティカル : 健常な皮膚と接触するが、粘膜や健常でない皮膚には接触しない器具の再生
処理
消毒レベルは
・ 高水準消毒 : グルタラール・フタラール・過酢酸etc
・ 中水準消毒 : 次亜塩素酸系(次亜塩素酸ナトリウムなど)・ヨードホール・ヨード系
(ポビドンヨード、ヨウ素など)・アルコール系(エタノール、
イソプロパノールなど)・フェノール系(フェノール、クレゾールなど)etc
・ 低水準消毒 : 第四級アンモニウム塩(ベンザルコニウム塩化物、ベンゼトニウム塩化物など)・
クロルヘキシジン(クロルヘキシジングルコン酸塩)・両性界面活性剤
(アルキルジアミノエチルグリシン塩酸塩など)
では、次にA₀値(Aノート値)とは?と言うと
対数的死滅則を80℃の熱水消毒に換算した時の等価消毒時間を秒で表示したもので、ウォッシャーディスインフェクターなどの国際標準規格である ISO15883-1に規定される概念となります。ISO15883では再使用医療器械に対してA₀値600以上、ウォッシャーディスインフェクター等の装置能力には熱水消毒性能としてA₀値3000以上を求めています。
以下の表がA₀値概念とスポルディングの法則・消毒レベルを相関させる表と言えるかと思いますが、高水準消毒と中水準消毒のA₀値分類に関しては、消毒レベルとの相関で表しにくい部分もあるりISOの規格で運営するのがベストと言えるのと医療器具の消毒・滅菌処理を行う前には、あらかじめ十分な洗浄を行うことが重要です。その後、スポルディングの分類に従って最終処理方法を決定します。
NCC Column LIST
また、変性・固着したタンパク質は洗浄しにくく洗浄を実施しても残留しやすいため、その後の消毒・滅菌不良の原因となりますのでご注意ください。
そして洗浄できない医療器具(電気メスのホルダー・ポーンソー・ドリルなど)の消毒・滅菌に関しては、生埋食塩水または消毒用エタノールをしみ込ませたガーゼなどにより清拭した後、酸化エチレンガス滅菌もしくは過酸化水素ガスプラズマ滅菌を行う事をお勧めいたします。