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医療器材の錆びに関して ~ステンレスの不動態膜再形成の重要性~
2021年05月28日医療器材(ステンレス)の不働態化とは?
ステンレスはstain(汚れ・しみ)+less(なし)、つまり「錆びない」という意味の造語がその由来です。
ステンレスは含有成分によりいくつかの種類に分類されますが、共通しているのは鉄(Fe)とニッケル(Ni)、それにクロム(Cr)が10.5%以上含まれていることです。クロムは酸素と結合(酸化)して表面に薄くて硬い皮膜を作ります。これが不動態皮膜でありこの皮膜が内部への腐食を防ぎさびや汚れの付着を防止します。
不動態膜の厚さは3nmと非常に薄いものですが、非常に強靭な膜で、破綻しても酸素があれば自動的に再生する機能を持っています。
器材メーカーから出荷されたばかりの新品器材は、言わば純粋なステンレス不動態膜が形成されており耐食性があります。しかし、加工や溶接などで皮膜が物理的に除去されており、鉱物油が塗布されているために自動再生ができません。そのために使い初めに能動的に不動態皮膜を作る必要があります。
また、古くなった器材は、自然酸化作用により不動態膜が自然と形成され錆びにくい医療器材となって行きますが、手術中の接触によるダメージや洗浄工程におけるダメージにより不動態膜が剥離され錆びやすい場所が発生します。その剥離された場所を放置すると孔食や折れ(破損トラブル)へ腐食が進行して行きます。
ダメージ(不動態膜剥離)を受けて医療機材は、不動態膜の再形成を促してやることで孔食や折れ(破損トラブル)へ進行せず再び錆びにくい器材に蘇ります。不動態膜の再形成を促す溶剤の紹介をさせて頂きます。
NCC Column LIST
thermoshield Pの作用は非常に単純なものです。不動態化は前述の通り、クロムが酸化して形成されます。つまり、酸化剤とステンレスを一定時間接触させればステンレス表面に不動態膜ができるというわけです。thermoshield Pの主成分は硝酸とリン酸、それに界面活性剤です。硝酸は強い酸化剤であり、硝酸の力で不動態膜が形成されるというわけです。