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2023年10月26日

中四国エリア担当の川端です。
秋もだいぶ深まって来て朝夕の寒暖の差が激しく体調を崩しやすい季節ですので体調管理をしっかりして行きたいものです。

今回はクロイツフェルト・ヤコブ病についてのテーマでお届けします。
クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)は神経難病のひとつで、精神症状で始まり発症から1~2年で全身衰弱・呼吸不全・肺炎などで死亡します。
原因は、感染性を有する異常プリオン蛋白と考えられています。CJDは世界中に広く分布しており、日本では人口100万人に年間1人前後の
率で発症するといわれています。日本では年間約200例(平成20年人口動態統計)の弧初性CJD患者が発生しています。

日本では2020年に『プリオン病感染予防ガイドライン』が日本神経学会より発表されており、
日常の診療や介護から手術器具の消毒・滅菌に関することや病理学検査まで様々な状況での感染予防について述べられています。
こちらのガイドラインは2008年版の改訂版となりそのアップデートされた内容になっています。
また記述はクリニカル・クエスチョン (CQ)形式となっており、クエスチョンに対して回答、解説していく形のガイドラインとなっています。

異常プリオン蛋白は通常のウィルスや細菌などの感染性物質などと較べ不活性化させることが困難な物質です。
このプリオンの不活性化(洗浄・消毒・滅菌)についても本ガイドラインでは詳しい記述がなされています。

まず不完全な方法としては以下の事柄が挙がります。

不完全な不活性化(伝達性が残存)
・オートクレーブ(134℃,18分)
・3%SDSボイリング、1M〜2M NaOH(20℃,1時間)、
・中濃度アルカリ洗浄液(pH12以下,55℃もしくは65℃)
・過酸化水素ガス滅菌(濃度、温度条件により伝達性が検出できない場合もある)

ほとんど不活性化されない(伝達性がかなり残る)
・過酢酸
・SDS(室温)
・過酸化水素水
・酵素洗浄剤

これら単体では不完全な不活性化法ではありますが、これらを組み合わせることで
伝達性を検出限界以下にすることが可能である、とされています。
ですので実際に不活性化を行う場合、複数の不活性化法を組み合わせて行う事が強く推奨されています。
例えば、アルカリ洗浄剤とオートクレーブを組み合わせることにより高いレベルの不活性化が可能となります。

ただこちらのガイドラインでは
第2章 プリオンの不活性化
第3章 ハイリスク手技に用いられた手術器械
第4章 脳神経外科手術
第5章 眼科治療
第6章 歯科治療
第7章 整形外科治療
第8章 消化管内視鏡検査
と科目などで章ごとに分かれておりそれぞれの章に不活性化の方法の記述があります。
微妙にそれぞれの章で書かれていることに違いがあります。
WDとオートクレーブを備えている施設での方法としては概ね以下方法が書かれています。
自施設でのご参考になれば幸いです。

(A)アルカリ洗浄剤を使用できる器械(必ず、高温アルカリ洗浄を行う!)

WDによる高温アルカリ洗浄(90~93℃) → オートクレーブ(134℃、8~10分間)

(B)アルカリ洗浄剤を使用できない器械

適切な洗浄剤による十分な洗浄 → オートクレーブ(134℃、18分間)


海外でのガイドラインはこれらの方法とはまた異なる記述があり、当然ですが国ごとに考え方は変わってきます。
海外でのプリオン不活性化についてはまた別の機会でご紹介したいと思います。

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