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手術器材に使用されるステンレス鋼について ~ステンレスとは?~
2021年09月08日以前のコラムで『ステンレスの不動態膜再形成の重要性』に関してお話をさせて頂いたかと思います。興味のある方は、ぜひ以前のコラムを見て下さい。
そこでは、錆に関して触れていますが手術器具に広く使われているステンレスに関してはあまり深く触れていません『錆びにくい・腐食性が強い』鋼と言う事に触れているだけかと思います。今回は、ステンレスに関して深く触れて行こうと思います。
前回と似た話からになりますが、『ステンレスとは』鉄(Fe)を主成分にして、これにクロム(Cr)やニッケル(Ni)を含有させた合金です。
一般的には、クロムを11%以上含有させた鋼をステンレスと定義させています。
これはクロムが11%以上になると、さびにくさ(耐食性)が飛躍的に向上する性質から来ています。
ステンレスとは、Stainless Steelの略称で、Stainlessは錆にくい、そして Steelは鋼のことです。
すなわち『錆びにくい鋼』ということになり、『錆びない鋼』ではありません。
ステンレス鋼には、マルテンサイト系、フェライト系、オーステナイト系の三系統に分かれます。
NCC Column LIST
1.マルテンサイト系ステンレス
鉄に13%のクロムを合金化したもので炭素量が多いもの。
一般の鋼と同様に、熱処理(焼き入れ・焼き戻し)により高強度、高硬度などの優れた
機械的特性が得られる性質をもちます。さらに常温で磁性を有しています。
但し、他の系統のステンレスに比べ、耐食性の面では劣ります。
2.フェライト系ステンレス
鉄に18%のクロムを合金化したもの。
殆どの鋼主が16%以上のクロムを含有し、安定したフェライト相を形成していますので
熱処理しても硬化する性質をもちません。一方耐食性・耐熱性の面ではマルテンサイト系
ステンレスよりも優れた特性をもちます。さらに常温で磁性を有しています。
3.オーステナイト系ステンレス
鉄に18%のクロムと8%のニッケルを合金化したもの。
一般にステンレスとも呼ばれている鋼で、冷間加工だけで硬化し、熱処理では硬化しないで軟化する、いわゆるオーステナイト組織を形成しています。フェライト系ステンレスに比べ、機械的性質などに優れています。
手術器具には、1種類のステンレス鋼で作られている製品と2種類以上のステンレス鋼を用いて作られている製品があります。
また、この分類に入っていませんが高価な析出硬化系ステンレスを使用している手術器具もあります。
使われているステンレス鋼によっては、耐食性に劣る製品もあるのが現実かと思います。「ステンレスが何故錆びるの!!」ではなく錆びた原因や錆びた手術器具に使われているステンレス鋼を調べる事によって錆対策が可能となる場合が多くあります。
手術器具の劣化や錆びトラブルでお困りの際は、一度弊社へお問い合わせ下さい。全てが解決できるかは分かりませんが、かなり『スッキリ』して頂けるかと思います。