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医療機器洗浄アドバイザーコラム 第46弾
2025年01月30日近畿・東海・北陸エリア担当の竹中です。
皆さんは年末年始のお休みは長かったでしょうか?
一般企業に勤務されていると9連休の方も多かったようですね。
私の年末は毎年大掃除が1年の締めになっていますが、普段掃除していない場所、
特に台所周りは焦げた汚れや油汚れがこびりついて時間が掛かります。
何かお勧めの掃除方法があれば教えて下さい。
家の掃除は年末にまとめて行えば、妻から文句を言われる事もないのですが、
医療器具は、その都度確実に洗浄しなければならず、洗浄が難しい器材も
多く中材業務の重要なポイントで近年では、医療技術の進化に伴い、
手術で使用される医療器具はより精密で複雑な構造を持つようになっています。
特に内腔を持つ器具や多関節構造の器具・微細な部品が組み込まれた器具などは、
洗浄が難しく従来の方法では十分な清浄度を保証することが難しくなっています。
本コラムでは、複雑構造を持つ医療機器の洗浄課題とその解決策について情報提供したいと思います。
複雑な形状を持つ医療器具は、その構造的な特徴により洗浄時に以下のような問題が発生しやすくなると言われています。
★内腔部への汚染の残留
腹腔鏡下手術や関節鏡下手術で使用されるラパロ鉗子や関節鏡器具・吸引管などの内腔を持つ
医療器具は、血液・組織片・脂肪が内腔下側面に付着しやすく、適切に洗浄しないと汚染物が
内腔下に残留してしまいます。
特に、血液と組織片が混ざり凝固すると内腔に詰まり、通常の洗浄方法では除去が困難に・・・
長い時間をかけての洗浄が必要になります。
★微細部品の隙間に残る汚れ
繊細な部品が多く使われているロボット手術器具や微細なヒンジ機構を持つ器具は、洗浄液・
物理的要素が届きにくく残留タンパク質やバイオフィルムの形成のリスクがあります。
また、洗浄不良の医療器具が次回の手術に使用されると、SSI(手術部位感染・
Surgical Site Infection)の発生率が高くなります。
複雑構造の医療器具は、外見上は洗浄が完了したように見えても内腔に汚れが残存していることが
多々あり様々な洗浄方法の検討が進められてきております。超音波洗浄装置も、その一手段として
選ばれる事がありますが、ワイヤー構造の様に編み込まれた内腔内部構造や深い凹凸構造を持つ
器具にはキャビテーションが十分に伝わらず、汚れが残る可能性があると言われています。
では、これらの課題を解決するために、どのような対策が有効なのでしょうか?
NCC Column LIST
●まずは、適切な前処理の徹底を必ず行いましょう!!
血液やタンパク質の凝固を防ぐために、使用後できるだけ早く前処理を行うことが重要ですが、直ぐに
処理できない時は、予備洗浄乾燥防止剤(※乾燥防止剤ではありません)を利用し固着汚染物除去を
行うと前処理業務が楽になります。
直ぐに処理できる場合も固着汚染物の除去を、アルカリ酵素洗剤などを使用した浸漬洗浄や、プレ
ウォッシュ機能を備えた洗浄装置を活用し行うことで、自動洗浄装置での汚染物残留発生率を低減
することが出来ます。
●ウォッシャーディスインフェクターでは、内腔洗浄専用の洗浄システムの活用!!
近年のウォッシャーディスインフェクター(WD)には、様々内腔洗浄専用のノズルを備えた洗浄
ラックが登場しており、内腔の隅々まで洗浄液を送り込むことが可能になっています。
これにより、従来のラックチューブ接続洗浄による内腔洗浄よりも、確実な汚れ除去が期待できます。
ラックの種類が増えるのと費用が掛かりますが、清浄度保証を考えるとウォッシャーディスイン
フェクター納品前には、メーカーによる物量調査を必ず実施しましょう。
●超音波洗浄装置の進化システム、真空超音波洗浄の活用!!
通常の超音波洗浄では洗浄液が届きにくい部分に対して、真空超音波洗浄を活用することで、
内部に入り込んだ汚れをより効果的に除去できます。特に、ラパロ鉗子や細径のカニューレなど
やロボット手術器具には有効とされています。設置場所等の課題はありますが、洗浄業務の簡素化
と清浄度保証が簡易的に実施できる様になります。
今まで紹介した様な様々なシステムが開発されていますが、どのシステムを選択しても清浄度保証の
ための定期的な検証は行って下さい。洗浄が適切に行われているかどうかを残留タンパク検査・
臨床使用の医療器具を使ったインシチュー検査やバイオバーデン測定・内視鏡カメラによる確認などの
方法で定期的に検証することが推奨されます。また、医療機器メーカーが推奨する洗浄プロトコル
を遵守し、エビデンスに基づいた洗浄手順を確立することも重要です。
複雑構造の医療器具は、その構造特性上、適切な洗浄を行わなければ汚染の蓄積や感染リスクの
増加につながります。洗浄プロセスを最適化するためには、適切な前処理、専用の洗浄装置の活用・
真空超音波洗浄の導入・定期的な清浄度検証が不可欠です。手術器具の清浄度を保証することは、
患者の安全を守る第一歩で洗浄工程の最適化に向けて、最新の技術を活用し、科学的なアプローチ
を取り入れていくことを考えて行きましょう。