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医療器具の洗浄評価はどうする~小さなことから習慣化~
2025年02月13日2月は寒暖差や経済環境の変化が大きいと言える月です。そのため、変化にあわせて適切に対応できるようにしておくことが大事ですね。ダーウィンの進化論でもあるように、『生き残るのは強いものや賢いものではなく環境に適応できる能力を発揮できたものが生き残る』です。中央材料部の業務でも昔はこうだった!とか、昔からこのやり方で通してきた!と言っている方を稀に見かけますが、中材業務も時代と共に変化し進化し清浄度保証や求められる精度も年々高くなっています。今回コラムでは、中央材料部の業務で進化が早いといわれている医療器材洗浄の洗浄評価についてです。医療機器洗浄アドバイザーコラム 第44弾に洗浄インジケータの規格等詳しく説明をしているので今回は、洗浄保証の諸外国のガイドライン記載事項などの情報提供を行いたいと思います。
まず、第44弾にも記載していますが洗浄インジケータとは、洗浄装置の作動確認(温度・時間・化学薬品の濃度など、特定の洗浄条件を確認するための指標です。
使用方法は、ウォッシャーディスインフェクター(WD)や超音波洗浄器内に設置し、洗浄終了後に
インジケータの変色状態を目視または機器で測定・判定を実施し洗浄装置がエラーなく作動したかを確認します。
洗浄インジケータとは違った形の洗浄評価では、チャレンジデバイスがあります。
チャレンジデバイスは、洗浄工程が血液、タンパク質、脂質などの有機汚染物を効果的に除去できるかを確認するために行われ擬似汚染物(テストインク、人工血液)を使用し、洗浄後の残留状況を測定・判定し洗浄プロセスに問題が無いかを確認します。
では、諸外国のガイドラインで洗浄の規定について、基準と実践方法を紹介させて頂きます。
1. 国際規格EN ISO 15883シリーズ(洗浄に関する規定)
EN ISO 15883は、ウォッシャーディスインフェクターの洗浄性能に関する基準を詳細に示した
国際規格であり、特にEN ISO 15883-1とEN ISO 15883-5が洗浄に関して重要です。
○ EN ISO 15883-1(基本要求)
この部分ではウォッシャーディスインフェクターの基本的な要件や洗浄、消毒、乾燥プロセスに必要な
条件が規定されています。洗浄のためには正しい水温、圧力、機械的な洗浄力が必要で、これらが規定されています。
特に、洗浄プロセスにおいてどのような洗浄剤が使われても構わないか、また洗浄にどのように汚染を
管理するかが定義されています。
○ EN ISO 15883-5(汚染除去の検証):
この部分では、ウォッシャーディスインフェクターの洗浄性能を検証する方法が詳細に説明されています。
汚染除去の検証は、チャレンジデバイスを使用することにより行われます。チャレンジデバイスは、
特定の汚染物(例:血液・脂質)を模倣したものを使い、その除去効果をテストするものです。
これにより、ウォッシャーディスインフェクターが実際に汚染を効果的に除去できる事を確認できます。
検証の結果が基準を満たすことを保証するために、デバイスが汚染物を完全に除去できることを確認する
装置・設備が必要です。
2.ドイツのDGKHガイドライン(洗浄に関する規定)
ドイツでは、DGKH(ドイツ病院衛生協会)が、医療機器の洗浄に関するガイドラインを提供しています。
このガイドラインでは、ウォッシャーディスインフェクターの定期的な洗浄検証が強調されています。
○ 洗浄後の確認
洗浄後に残留物や汚染物質がないかを確認するための臨床で使用された医療器具の残留タンパク質測定が
定期的に求められます。
○ 洗浄剤と洗浄条件
使用される洗浄剤に適している水温・水質・時間・圧力などメーカーが規定する範囲でプロセスが進んで
いるかを確認することが求まられます。
○ 適切な機器の選定
施設ごとで洗浄する医療器具構造に合わせてウォッシャーディスインフェクターのラック選定が行われ、
洗浄性能がその医療器具に適したものであるかが確認することが求められます。
3.フランスのAFNOR規格(洗浄に関する規定)
フランスのAFNOR規格は、ISO基準に定める、ウォッシャーウォディスインフェクターの洗浄性能に関する
評価が定められているのと臨床で使用された医療器具の洗浄後に残留タンパク質が医療器具ごとの範囲で
規定しれており汚染度合い医療器具種類に応じた適切な洗浄条件が設定されているか、プロセス条件を設定
する際にインシチュー検査を実施となっています。また、ウォッシャーディスインフェクターには、
定期的なバリデーション実施が推奨され、プロセスが確実に洗浄機能しているかどうかを確認することを
求めています。
4.イギリスのHTM 01-01(洗浄に関する規定)
HTM 01-01では、医療機器に関する技術的なガイドラインが洗浄を提供しています。
特に洗浄に関連する部分では、インシチュー検査が強調されています。
○ 洗浄プログラムのインシチュー検査
医療器具表面の残留タンパク質は5㎍以下である事が定義されており清浄度を確認するために、
設定変更を行った際や定期的に洗浄プログラム毎の臨床使用医療器具インシチュー検査の実施する
ことを求めています。このインシチュー検査では、洗浄プログラムが再現可能で、予測可能な結果を
得られることが重要となっています。
諸外国の洗浄に関する規定をまとめると
洗浄が適切に行われたことを確認するために、チャレンジデバイス検証だけではなく臨床使用の
医療器具の残留タンパク質の測定が求められています。残留タンパク質の評価や検証は医療器具の
清浄度を保証するために必要な業務だと言っています。日本では、臨床使用の医療器具
インシチュー検査まだまだ普及していないのが現状ですが、清浄度保証をする事は、
小さい事からでも習慣化し実行して行く事ではないでしょうか。まずは、
ウォッシャーディスインフェクターや超音波洗浄装置の稼働確認の洗浄インジケータ採用から
初めて見てはいかがでしょうか。
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